釣り釣り徒然記 その33「船の上に、五匹の子豚が…」


という事は、船の上に六時間程度いるとして、オニカサゴのアタリを感じてデッドスローで巻き上げ、そのオニカサゴを船上に取り込むまで、中深場なら十分もかからないでしょう。まあ、仮に十分としたら、三匹で三十分…。船上で何もない時間は五時間と三十分…。誠に単純な計算ですが、外道を入れなければ、それだけの時間、船上では何もない(もちろん釣りをしているのですけど)時間を過ごしている訳です。もっとも、食事をしたり、飲み物を飲んだり、タバコを吸う人は一服したり、トイレに行ったりと、全く何もしていない訳ではないのですが、コマセマダイやイサキだとコマセの入れ替えでそれなりに忙しいのですけど、コマセマダイでも余程大物でやり取りに時間がかからない場合、5匹のマダイを釣って万々歳でも、五時間程度は何もない時間を船の上で過ごしている訳です。渋い状況は正直つらいですけど、かといって、「あまりに釣れないので飽きてしまう」ということはないですよね。少なくとも、私はありません。
しかし、それだけの時間、竿先に集中している訳ですから、やはり釣りというのはストイックなものであると思います。やった事はありませんが「底師」といわれるイシダイ釣りをされる人は、ピトンを磯に打ち込んだ竿掛けの竿先を一日中眺め、それが海に引き込まれていくのをジッと待っています。ボウズ率も高いとか…。TV番組で、波が叩き付ける磯の上で、飛沫に打たれ、時には雨に打たれ風に吹かれながらジッと竿先を見つめている姿は、何かの修行僧のようにさえ見えてきます。船の上は何だかんだと船長と話したり、連れがいなくとも近くの釣り人と話したりで、それほどストイックな姿ではありませんが。
ですが、時々、「大名釣り」といえば良さげに聞こえるのですけど、あまりにもガラガラの船上(片舷、一人とか)で渋い時間を過ごしていると、時間の流れも感じる事無く、頭の中が空っぽ状態になる事があります。そんな時に、ふと何かの拍子で、昔聞いた歌がその空っぽの頭の中に流れ始める事ってありませんか?何故その歌なのかは分かりませんが、本当にふと流れ始め、そこからは一日中その歌が流れ続け、時には幻聴のように実際の音まで聞こえてくるような気がする時もあります。
ある日の渋い根魚釣りの時、ガラガラの船上でふと頭の中に歌が流れ始めました。その歌は、正確な題名は忘れましたが「五匹の子豚が、五匹の子豚が、チャー・ル・ス・トン~♪」。それから一日中、頭の中に「五匹の子豚♪」です。時間が止まったような船上で静かに竿先を見つめ続ける頭の中に、五匹の子豚。なんで…? 「底師」の頭の中にも、何か歌が流れているのでしょうか…。
皆さんも、ご経験はありませんか?釣りの時だけには限らないのですけど、何かの拍子にあるメロディーが頭の中に流れ始め、ズッとそれが続いてしまう事。童謡だったり、子供のころに見たアニメのテーマソングだったり、CMソングだったり…。ノリノリのロックンロールが流れる事は無いですね。どちらかというと、単純なメロディー…。
ある古い本で読んだ言葉を思い出しました。正確には覚えていませんが、こんな内容だったと思います。「朝より頭になにやら流るる歌あり」。そして、こう続きます。「そは誠にくだらぬ歌にして」。
何なんでしょうね…。
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